〜フランスから No50:カバノン 〜
さざ波の音。
やわらかな風。
樹々の香りをとかしこんだ透きとおる空気。
窓越しにみえる青い海。美しい風景…。
6月。コート・ダジュールのモナコまで行ったついでに、もう一歩足をのばしてみたところがあります。
ロクブリュヌ・カップ・マルタン(Roquebrune Cap Martin)。イタリア国境までもう数キロの小さな村。
この村のはずれの海を見下ろす高台にあるコルビジェの休暇小屋(cabanon:小屋、小別荘)。
巨大な建築物も造り、都市スケールのプランまで手がけた建築家が、晩年に自分のために建てたのは、この3.6m四方ほどの小さな小屋でした。
でも、それは周辺の光、風、空気、音、香り、風景を感じ、そこから新しいものを生みだすための“装置”としてみると、それまでの作品に共通するまさに彼の哲学の本質そのもの。むしろランドスケープ・造園の“こころ”のようにさえみえてきます。
この小さな小屋の小さな窓から無限の構想を夢見ていたそうです。
1965年8月27日。
彼は、その夢を抱きつつも、小屋の下に広がる海岸から、コート・ダジュールの青い世界の中へ帰っていきました。
夢ってあるといいと思います。
(大それたものでなくても。「こうしたいな」というちょっとしたことでも)
夢があると自分らしく活きいきとしていくエネルギーになるような気がします。
フランスの田舎街の小さな部屋で、45年の生涯の中で、はじめてまったくひとりで暮らしたこの一年。
昨日は、ボーヴェのアパートを引き払いました。この週末はパリで過ごします。
農大の短期留学の学生たちもやってきました。もう秋の空気です。
そして、月曜日にはいよいよフランスを発ち、日本へ帰ります。
しかしそれは、帰るというよりは、いろいろなものを観、いろいろなことを感じた時間(とき)を、次なるステージにつなげていくテイクオフ、新たなる旅立ちにしたいと思います。
いつも長くなってしまうブログを見て下さった方々と、留学にあたりお世話になった多くの方々に感謝しつつ、フランスからの便りを終わりにすることにします。
(S)