博物館トピックス
(「食と農」の博物館)

新しいお箸を削って新しい年を迎えよう!

 平成30年12月15日(土)10:15〜12:30「食と農」の博物館の2階セミナー室にて「新しいお箸を削って新しい年を迎えよう!」の講座が開かれました。
 木材の様々な性質を学びながら、自分で作ったお箸で新年のお食事をいただく、ということを目標にして、実際に木に触れながらお箸づくりを体験しました。
 今回は東京農業大学 森林総合科学科の大林 宏也先生を講師にお招きし、6組15名の親子連れの方々にご参加いただきました。
 最初に話されたのは様々な木材の性質についてでした。そもそも、木材と材木はそれぞれ違うものを指す言葉であるということや、様々な樹種とそれによる材の質感の違いについてのお話があり、その次に参加者の皆様の机に木の枝が配られました。
 配られたのはケヤキの枯れ枝で、ケヤキは枝先に実った種子が、枝もろとも枯れて落ちることによって種子のみよりも風に触れる面積を増やし、より遠くへ子孫を残す戦略をとっているという非常に興味深いご説明がありました。ただの落ち葉と思いきや、その意外な知恵に参加者の方々も興味津々の様子です。このほかにも、道を歩いて木々を見るのが楽しくなるような様々なお話をお聞きしました。

 そして、後半は卒業生の金城せりかさんからのお箸づくりの講座が始まりました。
 最初に木材には抵抗なく削ることができる「順目(ならいめ)」と「逆目(さかめ)」があるというお話でした。難しい専門用語ですが、これは猫をなでる時と似ていて、順目は頭から背中にかけて撫でた時で、逆目はしっぽから頭にかけて撫でた時に似ているというお話がありました。身近なたとえのお陰で小さなお子様にも分かりやすいようで、自分の髪で感触を確かめて実感する方も見受けられました。
 一通りの木材の扱いについての解説が終わると、かんなやヒノキでできた棒のような木材が配られ、かんなを組み立てることからいよいよ作業はスタートです。かんなの刃は出すぎていてはガタガタと引っかかってしまい削ることができず、しかし、あまりに出ていない状態では削ることができません。この絶妙な加減がなかなか難しく、最初の荒削りの段階ではかんなの刃が髪の毛一本分(!)程度出ている状態が理想的であるといわれており、来館者の皆様も四苦八苦しておられる様子でした。見本としてかんなの削りくずが配られ、それをまねして同じ削り方ができるようにと、親御さんも夢中になって挑戦しておられました。
 最初はうまく削ることができなかった方も、講師とアシスタントの方々に教わっているうちに徐々に上達してゆき、後半ではセミナー室いっぱいに木を削るガリガリという小気味良い音が響いていました。また、ヒノキは非常に良い香りの材であるため、作業が進むとヒノキのリラックスできるような香りがかんなから漂い、かんなくずをお持ち帰りになる方も見受けられました。
 作業が進むと、かんなの刃を引っ込め、さらにより細かい作業に移ります。この時にも参考としてこの作業時にできるかんなくずが配られ、鰹の削り節のような薄さに参加者の驚くような声が聞こえてくる場面がありました。
 このころから徐々に参加者の皆様が作業に慣れ、お手元に配られたただの木の棒の様だった木材がしっかりとしたお箸の形になってきました。そこで、仕上げの最後の削りの作業の説明が金城さんよりありました。
 今回はやすりを使わずに仕上げるという説明がありました。その理由はやすりを用いると確かに手触りは滑らかになるものの、木材表面の細かい組織が毛羽立ったようになってしまうそうです。そこから水が染み込んでくるために腐食が早まり、お箸としての寿命が短くなってしまう欠点があるとのことです。この違いは外見上では全く分からなくても、お持ちいただいた顕微鏡写真を見てみると一目瞭然です。
やすりを使わなくても、形の出来上がったお箸を回しながらかんなの持ち手部分でこすることで木材に負担をかけずに手にフィットする滑らかな質感にすることが可能であるという裏技も教えていただきました。
 これらの作業が終了し、完成したお箸に自分の名前を焼印で入れてゆきます。漢字、カタカナ、ローマ字、名前ではなく絵を描かれる方など人によって様々で、名前を入れる作業が終わると最後に折り紙で箸袋を作ってそこに入れて完成です。今回は通常の長方形をした箸袋のほかに、クリスマス仕様でサンタクロースの形状をした箸袋も作り、個性が光る世界で一つだけのオリジナルお箸が完成しました。

 この講座で作ったお箸は9年以上使い続けることができるような、しっかりとした作り方をしているとのことで、参加者の皆様におかれましてはぜひ使い込んでいただき、ヒノキの質感や香りを身近に感じていただける良い思い出の品になればと思います。
 今回ご参加いただきました皆様、本当にありがとうございました。


博物館スタッフ T.U

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